全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

28 2017

香椎亜貴ルート 感想 +総評

最初は一人攻略も難しいかと思いきや、一人攻略してしまえばなんだかんだ完走出来た。楽しめた部分もあったけど、それ以上に惜しい作品という位置になってしまったのは本当に悔やまれる。もっとぶっ飛んでくれたら小躍りの1つや2つを画面前でカマしながら感想を叩けただろうにと。亜貴ちゃんのヤベエ歌詞をBGMに小踊りたかった。


●香椎亜貴ルート
亜貴ちゃんの闇の過程はよくわかった。母親に自分が居なければ結婚してなかったと言われたこと、母親が弟の玲音ばかり可愛がること、母親の期待に答えようとして失敗してしまったこと、弟を守ることだけが自分のアイデンティティであったのにも関わらずそれすらも母親に奪われてしまったこと。そして母親にいろんな傷を与えられたところに、久遠が癒やしてくれたと思いきや久遠もまた『自分だけの大切な女の子』を見つけ、そしてその女の子に傷つけられたと。そんな何段構えで女性のトラウマを植え付けられたところで自分の気持ちを正直に歌詞に書いたら、ハイセンスなヤベエ歌詞がご誕生なされたということだった。
でもこれらを踏まえたらあれらの歌詞は理解できなくはない。一度は愛してくれたのに『裏切り』が大体テーマになっているから、女性云々というよりも裏切られたことに対する感情が主なのではないかなと感じた。でもまあ女性が起因だから、女性に深い恨みも持つのも納得は出来るが。
女への情念を歌詞にするのは分かるんだけど、イチモツのStand Upを格好いい言葉で表現したsnow whiteの歌詞だけは女とセックスを恨んでるであろう亜貴ちゃんの歌詞とは認めたくないというか納得出来ないというか……。キスだけで頬を染めていた亜貴ちゃんがイチモツの暗喩の歌詞書いてるのがいまいちしっくりこない。久遠とかつむぎとかだったら「おめえもヤベエ歌詞センスしてるんだな」って喜べたんだろうが。(喜ぶところか?)

久遠ルートで『好きな人は久遠』という暗示のようなものは、上手いとは言えないけど多少なりとも誤魔化されていた。誤魔化すっていう表現が正しいのかどうかはよくわからないが……。
「好きになっては行けない人」=「弟の好きな人」で、今まで苦しんで幸せになるべき弟の好きな人を自分も好きになってしまった、ということだった。ならば何故つむぎルートでつむぎに惹かれる主人公を見守れて、久遠ルートでは体調崩すまで苦しんだのかっていうのがよくわからない部分ではあるのだけど、久遠は自分と同じ苦しみを理解して自分と同じ立場でいてくれたのに、自分を差し置いてしかも自分の好きな人と想いあうことが出来たからかな、と勝手な理由付けをして自分の中で納得した。つむぎは後から加入したので言い方は悪いが部外者的な扱いも出来るけど、久遠とは本当に距離が近かったので、そういう意味で苦しんだんだと思えば……まあ納得できなくもないけれど、これも作中で詳細を明言されたわけではないのがなんともなあ。

亜貴ちゃんが主人公を好きになる理由もわからなくはない。もちろん逆も然り。これは玲音ルートでの補正と一緒だけど、幼馴染っていう点が大きい。亜貴ちゃんの中で女性として受け入れられるのは現時点では幼い頃から一緒だった主人公だけであって、それだけ亜貴ちゃんの女性に対してのハードルはとても高い。あんなヤベエ歌詞書いてるから高くて当然だ。
ここで主人公が自分の気持ちを自覚して亜貴ちゃんに迫るんだけども、亜貴ちゃんが中々それを受け入れられないのもよくわかった。弟と幸せになって欲しい感情と、自分も両親と同じ立場になってしまうのではないかという恐怖とでぐちゃぐちゃになって中々壁を乗り越えられない描写が続いたけど、ひょいと軽く乗り越えられてもそれはそれでこちら側の表情が歪むので、苦しんでいる様子は楽しめた……と言ったら亜貴ちゃんには悪いが。

最後はレヴァフェ全員の後押しで一歩を踏み出すのは結構ほっこりきたな。主人公と亜貴ちゃんの背中を押す玲音の格好良さよ。他ルートで玲音は主人公の気持ちを察したらすぐ背中を推してくれる。自分の気持ちをしっかり伝えながら、それでも相手の気持ちを優先して祝福する玲音の心の強さと格好良さが他ルートで燦然と輝く。眩しい。


・アンコール
ここまできたらセックスするのはまあ500万歩譲るとしても、亜貴ちゃんルートでは散々「自分が居なければ良かったのに」という思いを抱えて生きてきて、母親にも「亜貴がお腹に居なければ結婚してなかった」って言われたぐらいトラウマ化しているのに、あっさりセックスできてるのはかなり納得が行かなかった。いざという時に勃たない描写も期待してたんですが、まあ普通にセックスしてましたね。セックスっていう亜貴ちゃんにとっては恐怖を抱くであろう行為がこうもあっさりと他ルートと同様に描写されてしまうと萎えるなあ。ここで苦悩してセックスに中々至れないっていう美味しい描写を放棄されてしまった悲しさもある。そんな感じでよくわからないところで悲しんでいた。やはり亜貴ちゃんも性欲が睡眠欲の500倍のこの世界には抗えないのか。
あと本編のBADでもそうだったんだけど、このルートでのみ主人公の母親と亜貴・玲音の父親が再婚するのはちょっと驚いた。他のルートでもそういう未来が待ってそう。というか優しくて亜貴ちゃんに似ている香椎父がどうして香椎母と結婚したのかはダイナミックコード永遠の謎です。


●サブキャラ雑感
・上遠野理緒(主人公)
何かしたのかと問われると、言葉に詰まる程度には記憶にない。マネージャーをしていたらしいがその描写が一切ないので、序盤は何もしてないのに皆に好かれる描写が続くので少々忍耐が必要かもしれない。
いじめられても多少の耐久力はあるものの、急に落ち込んだりする謎メンタル。そしてメガネを外すと超絶美人になる素晴らしい設定はメガネ派を敵に回した。メガネしてても外しても可愛いんですけどね、むしろ私は主人公のビジュアルが可愛いからレヴァフェ編を買ったっていう経緯があるので。
オシャレをしだす過程はルートに寄って違ったけど、一番好きなのは『自分が可愛くなる努力をしなかった』といい切った亜貴ちゃんルートかな。とある理由で亜貴ちゃんを馬鹿にされて、主人公も地味だと馬鹿にされるのだけど、自分が馬鹿にされるのはその努力をしなかったからしょうがない、だから自分も努力して隣に立つに相応しい人間になろうと意気込む展開は多少なりとも心に響いた。
それ以外はここまで可もなく不可もない主人公は久しぶりだなと思ったけど、これはブラハをプレイした時も思ったので、ハニブラのテンプレなのかもしれない。特に秀でたステータスのない普通という『個性』なのだろうか。あ、優等生キャラで恋愛ごとで成績落とす描写が無いのは良かった。

・麻生 夏菜子、鈴原 香魚
最初は主人公をいじめていたがレヴァフェメンバーの仲裁により何故か主人公と友人になる。友人になる過程があっさりすぎて本当に意味不明過ぎて、私の中で今でも謎の存在である人たちになっている。ふたりともいいキャラなので、仲良くなる過程さえちゃんとしていればと悔やまれる。

・月野原 永久
ダイナミックコードという混沌とした世界に降り立った聖女。もとい久遠の妹。彼女の聖女っぷりは亜貴ちゃんルートで発揮されます。
女性を自分の領域に入れない亜貴ちゃんの気持ちをよくわかっていて、主人公の亜貴ちゃんを思う気持ちもよくわかっていて、それでもしっかり主人公の気持ちを言葉に出させて、二人の気持ちを理解して応援するとまで言って身を引いた永久ちゃんの聖女っぷりが、この荒んだ世界を癒やすような光でした。そしてそれを告白して別れる時の一瞬悲しそうな表情の立ち絵がまた胸に来た。いちばん大切な人のために、自分の気持ちを犠牲にして主人公の背中を押した永久ちゃん以上の聖女がこの世界にいるでしょうか。(反語)
初見で「ニコニコしてて怪しい裏があるかもしれない」と疑った自分が本当に恥ずかしい、永久ちゃん殴ってくれ。(ご褒美)


●総評
・システムについて

ジャンプ機能は欲しかったけど、そこまでボリュームの多い作品ではないので無くてもなんだかんだオッケーでした。
非アクティブ時の動作をこちらで指定出来るのは良かった。自分は基本立ち上げっぱなし派ですが、非アクティブにしたらBGMも止まるように出来るのはありがたかったです。クイックセーブ・ロードも付いているしその他細かい動作も指定できるのでとても助かった。
難点を上げるなら、明らかに一度読んだ文章なのに、違う選択肢を選んだら未読判定されてスキップがちょいちょい止まったこと。

・グラフィックについて
正直に言うとこの絵柄が苦手なのだけど(表情とかも含め)、見ていく内に気にならなくなっていった。でも自分は基本どんなゲームでも最終的に気にならなくなる人間なのであまり参考にはならない気がする。絵柄は苦手ですが骨格等がおかしい部分も無かったと思うので綺麗なスチルだったように思う。見れて有り難い出来でした。
スチルの枚数が少ないのは値段を考えればまあ妥当なところではあるのだけど、それでもここに欲しかったなと思うところでも立ち絵で誤魔化されたりしたのは少々寂しかった。

・シナリオについて
良くも悪くも毒のないシナリオだった。描写の表現も普通で強烈な個性があるわけではなく、読みやすい。でもこの設定ではそれが逆にマイナス面になった気がする。こんだけヤバイ過去をお持ちの方々なのに、その表現がどこかあっさりしていれば、読み手のこちらがあまり傷つかないというか。
あと何度も言ってきたけど、価格を考えればこの量は理解は出来るのだけど、もう少し内面描写なり状況描写なりなんなりを色々増やしてくれたらもっと感情移入出来たのになあと。感情移入する前に展開がするする進んでいくので、ずっと流し見であまり感情移入出来なかったのは少々寂しい気持ちもあった。

ただ、キャラクターのクソ行動とも取れる部分にはある程度理由付けされていたので納得できないことはない。とりあえず殆どがヤリチンキャラだけど、ヤリチンになったのには理由があるし、そこに同情出来なくもない部分はある。ただ同情できるか出来ないかはやはり読み手次第で、自分はある程度流し見ていたから流せたって程度だろうか。
あとED後もクソ野郎のままだと勝手に思っていたのだけど、ちゃんと乙女ゲーらしく皆浄化されていて主人公一筋になっていたのはちょっと物足りなかったかな……何故物足りなさを感じているのか不思議でならないのだけど、ここまで悪びれも無く普通のこととして遊んでいるのなら、それを貫いたらいいのではと心の何処かで思っていたからだと。意外と皆そのへんの乙女ゲーらしさは守っていた気がする。いや、貫かれたらそれはそれで「ヤベエやつが来た逃げろ~~!」になる気もするけれど。

バンドで上手く行かなくて体調不良などで軽い失踪状態になる描写が続くのでちょっと飽きが来ていた。そしてよくわからん内に解決していくのもなんともかんとも。こういった、他のルートでは問題にもならなかったことが、そのキャラのルートでは大きな問題にされていたことが結構多くてちょっと萎えた。あと誰かが体調不良や学校に来なくてもとりあえず「放って置いて見守る」っていう手段を取って、結局いよいよヤベエぞって本人を捜索する展開がテンプレートになっていたのはもうちょっと変化球投げて欲しかった。



終えた後に思ったことは、勿体無い。本当に勿体無いと思った。これもっとグッチャグチャでドロッドロな重苦しい描写にして長々と苦しみを描いてくれたら一緒に苦しめただろうになあと思うと……そういう苦しみってあまり乙女ゲーでは表現されていないものである気がするので。もっとボリュームがあって展開もサラッとではなく重力半端なくしてくれたらのたうち回れたのに。設定だけが重くて描写が軽いのは比重が合って無くてそこで流せてしまったのは本当に無念です。
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