全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

04 2019

萬城トモセ、明瀬キョウヤ、射落ミズキ ルート 感想

女1人!男8人!性別不明1人!のドキドキわくわく共同生活!
男女比すごすぎて裏切り者がどうとか以前にプロデューサーの助平心が透けて見えるようでプレイ前からテンション上げ上げでした。この男女比露骨すぎてむしろ推せますよプロデューサーさん!

舞台は近未来、今よりも情報統制がされて機械も発達していた。ある日突然アルカディアとかいう異世界にぶち込まれた主人公は、強制的に異世界配信という異世界人たちに見せるドラマを演じさせられることになる。……強制されることがドラマぐらいでよかったな、ほんとドラマでよかった。この男女比でむしろさせられることがドラマだけってある意味捻くれてるっていうかいい趣味してるな。

そんな感じで飯も用意してくれるし風呂は一瞬で済ませられるし掃除も洗濯もしなくてもいいし周りはイケメンパラダイスだし、もうずっとみんなでここで適度に暮らそうや……って思いながら重い腰を上げてプレイをしていた人間の攻略感想です。


●萬城トモセ
乙女ゲーにおいての幼馴染枠って大体不憫枠なのでスタートダッシュから主人公好き好き!その他みんなじゃがいも!な態度を取る彼をこれ以上ないほど不憫なものを見る目で見てしまったのは申し訳ないとは思っているが、例にもれず本当に不憫だった。
トモセは露骨に主人公に好意を寄せていることを隠さないし、近づく男どもも普通に牽制する。このどう考えてもアレな男女比にも一番最初に物申してたし、主人公が大切で好きなんだなあというのは嫌というほどこちら側に伝わってくる。むしろ暴走しがちでちょっと抑えろと言いたくなるほどトモセの苛烈な感情は画面越しに波動となって体感できた。

そんな画面越しの私にすら伝わるトモセの好意を、頑なに見ないふり気づかないふりをする主人公。理由は、肯定否定してもどちらにせよこの関係が崩れてしまうのが嫌だから、らしい。ナンヤソレ。
幾千幾万もの幼馴染たちを攻略し、その他のルートで彼らが散るところを見てきたが、自身のルートでさえこの理由で返答も貰えずにずっと濁らせられているトモセを思うだけで、下戸の私がトモセの代わりに自棄酒でも呷ってやりたいとすら思った。そして便器にでも顔を突っ込んで胃の中のものと合わせてその感情やもろもろを水に流してやりたい。もちろん主人公にそんな態度を取られてしまうトモセは次第にこの異様な状況を「むしろこの世界でドラマしとけばチューとか恋愛関係疑似体験出来るしラッキー」とか解釈しちゃうのである。涙と胃液が止まらん。妄想の世界だけでオッケーって気持ちにまで下がってきてるなんて可哀想だ。
いやこれでもトモセはここへ来るまでも相当に待ったんだろう。作中でも言及されていたが、主人公を焦らせてもだめだと気遣う発言も見受けられた。そのトモセがこの非日常の世界を手にすることでストッパーが壊れてしまう様は不憫ではあったが、とても楽しく見ることが出来た。平然を装っているのに、中身が壊れ始めている。異様な世界に順応して壊れていく様子はトモセには申し訳ないが面白かった。普通ではない狂い方だし、それは主人公への感情が引き金だなんてとても美味しいじゃないか。
主人公の今の関係が心地よすぎて壊すのが怖いという気持ちもわからなくもないが、トモセの感情を有耶無耶にして逃避して気づかないふりをすることは、それ以上にその関係が壊れるリスクを背負ってでも踏み出そうとしたトモセの感情すら踏みにじる行為でもある。もし、ここで幼馴染以上に見られないという返答をしたのなら、トモセも諦めるなり諦めずに頑張るなり気持ちを次に進めただろうし、私も「それならしゃーないな」で納得出来たんだろうが、誤魔化すというのは対等な感情を求めたトモセにあまりにも失礼に思える。
そのうえ主人公は、いまはそういう問題じゃないだろ、という態度を取る。ある意味とてもご尤もであるが、悪い言い方をすればトモセの一世一代の感情から逃げたゆえの結末であるので、ここで主人公が怒るのはお門違いというかなんというか……この二人の騒動に巻き込まれる周りの人が可哀想だ。よく皆キレないでこの二人のいざこざ見守ってたな。皆大人だな。他8人だか7人だかの生命がかかってんねんで。

主人公の荒療治でトモセも周囲を気遣う目を取り戻し、主人公もなんだかんだトモセへの気持ちを自覚して、ディレクターに交渉して元の世界に戻る。色々端折ったが、ラストのトモセの戦いはそれまでの伏線も回収していたし、トモセの演技への情熱も感じられるようで良かった。あんなに頑なだった主人公の感情がいざこざであっさり感情を自覚したのは結構不思議だったし、もう少し丁寧に気持ちの変遷を描いて欲しかったという感情はあるが。それだけトモセへの返答を濁らせる主人公になかなかにストレスも溜まったのだけど、トモセの思考回路がそれ以上におもしろ愉快だったのでオッケーです。多分プロデューサーさん辺りと仲良くできそうな気がしなくもないな。


●明瀬キョウヤ
私はこういう明るくて統率力あって希望に満ち溢れた人間が実は裏で闇営業してましたみたいなのがなかなか嫌いじゃないので、豹変してくれ~!狂ってくれ~~!って願いながらプレイするという悪趣味と言うにふさわしい目で見守っていたのだけど、残念ながら清廉潔白だった。すまん!明瀬!申し訳ない!この世界には特殊な性癖を持った人間ってのが存在するんだ!

恋愛描写についてはやはり濃いとは言えないのだけど、この環境下では多少の吊り橋効果的なものはあるものだし(リョウイチも触れていたが)、昔からこういう主人公たちに圧力を掛けてくる黒幕は恋のキューピッドを担ってくれているので、可愛い年下の彼女も無事にゲットだぜ出来たし結果オーライなのではないだろうか。協調性あるしリーダーシップあるし頼りがいもあるし、希望も忘れないしその名の通り明るいし、主人公が惹かれて好きになるのもよく分かる。
それ以上に伏線回収が綺麗でそういう意味でとても楽しかった。主人公を妹みたいに扱う→実際に妹が居てそれが行動理由になって情報局に入る、会話が上手く噛み合わない部分がある→記憶が消されている、明瀬の両親がスポンサーだった絡みの話などなど……もちろん物語の核心に迫る部分は隠されているし、そこにやはり多少なりともフラストレーションは貯まるのだが、まあそれは後々回収されることを楽しみにしたいと思う。

そうそう、キョウヤの「傲慢な卑屈」に対する会話はなかなかに面白かったし考えさせられた。

キョウヤ「あれもこれも出来ないと不安がって、努力せずにいることが怖い。そういうのが、卑屈……かな。
そしてそれを人にも求めるところが、傲慢なんだと思う」
申し訳無さそうな目が、私を見た。
キョウヤ「瀬名。俺はあの時、『友人の死を受け止めて乗り越えるべきだ』と思ったんだよ。
そういう『努力』をすべきだと思ったし、もし俺なら出来ると思ったんだ。……俺なら、な」
大きなため息が出る。悔いるように頭に手を当て、言葉を重ねた。
キョウヤ「俺は他人も同じように出来ると、そうすべきだと思い込みすぎだ。それが俺の傲慢、かな」

……割と普通のことじゃないのか?度合いにもよると思うが。一歩踏み出すのが怖いのは割と誰にでもよくあることだと思うが。
絶対できる!俺なら出来るから!はポジティブな言い方をすれば相手への期待だし、「この人ならそれが出来る」と思うことは、相手への信頼でもある気がした。もしキョウヤがどんな人にでも同様のことを思うのならそれは『やりすぎ』に変化して『傲慢』になるのかもしれないが、なんとなく、キョウヤはある程度人を見て発言しているんじゃないかなあと思ったし、主人公にこれを明かした時点でやはり主人公を信頼しているからこそなのだと感じた。
まあその解釈はともかく、それを誰かはわからないが他者から言われて凹んでいる明瀬がとても興味深かったというか。こんなにポジティブ街道まっしぐらな言動を繰り返しておきながら、いざ他人から指摘されて、自分は感情を押し付けすぎていたと一歩引く事が出来るのなら、明瀬は間違った道に進まないような気がするな。というか、トモセとか獲端とか見て元気だしてほしい。アレぐらい空気読まなくても割と生きていけるから、たぶん。

ちなみにこの発言も巡り巡ってラストあたりで明瀬に直撃するところも良い。きれいな伏線回収だった。そこで主人公が立ち上がって助けに行くところも良かったし、主人公もきっと辛い時に明瀬にたくさん助けてもらったのだろうし、良い相互関係なんじゃないだろうか。凄い安定感のあるカップルが完成してしまった。
そこでラストでディレクターが一人残してその他が帰るか、その他を残して一人が帰るかの選択を迫るのだが、あっさり自分が残ると言うもんだからアル●ゲドンのテーマ曲が脳内で掛かってしまった。トモセルートの凝部もそうだったが、こんなにかっこいい「俺はここに残る」はとてもシビれた。

あとこのルートで拍手を贈りたかったのは、陽キャにありがちな、敬語やめてタメ口OKだよ~!な発言を主人公がスルーしまくって最後まで敬語を貫き通したところ。よくやった主人公!よくぞ美しい日本語を守ってくれた!
そして皆の前で俺たち付き合ってまーすを繰り出したあとにトモセが明瀬に「しばらく無視するんで」と面と向かって宣言するのが笑ったし正直トモセのそういうとこ凄く好きですね。そうそう簡単に割り切れない思いを抱えているのはルートを通ったのでわかってはいるけれども、嫌がらせすることも嫌味を言うこともなく、主人公の明瀬への気持ちも認めて、引くところは引く。本当に主人公のことが大切だったのだなあと他者でのルートでも見せられると、逆にこちらが辛くなってくる。美味しいものでも食べて元気だして行こうぜトモセ……。


●射落ミズキ
性別不明の御一人だが、最後まで見事性別不明を貫き通し「答えはベッドの中で」を繰り出されたのが妙に笑いのツボを刺激されて大笑いした。私は疲れているのか。……いや、でも最後まで性別不明を貫き通しあとはプレイヤーのご自由に、というのは誰も裏切らなくてそれはそれできれいなオチだなと思った。自分は答えがほしい人間なのでどちらか示して欲しかったが。主人公はもうどちらでも良いという判断をしているし、私自身もどちらが来ても「美味しい」とは思うが、できればやはり男性であってほしいので私の脳内では男性で終わった。

明瀬ルートが自己を犠牲にして全員を救う話だったが、射落ルートはそれとある意味対称的であると言える。明瀬が全員を救えるキャラクターなのだとしたら、射落は何らかの犠牲が必要なキャラクターだった。要するに主人公属性がない御方なのだが、こういう人が主人公になると上がる問題、みんな大好きトロッコ問題です。
少数と大多数、どちらか選択できるとしたらどちらを助けるかの思考問題。射落は過去異世界配信の協力者となった兄を止めきれずそのせいで大勢の人を異世界配信で亡くしたことを悔いており、次その選択が迫られる時が来たら迷いなく少数を犠牲にする方を選ぶと宣言される。これほど立派に建設されたフラグもあるまい。思考実験なので明確な正解は存在しないし、この問題を提示された分だけ答えは存在するのだと思っている。どちらを選択しても悔いは残るし、誰かの生命は助からない。だとすると、こういうのは選択時に『どちらを選べば自身の心が軽くなるか』なような気もする。射落がした選択もきっと、大勢を選べば射落の心が多少なりとも軽くなるからだろうなと。まあそれだけの意味じゃないってことも理解は出来るが……難しい問題だな。選択時は良いと思っても選んだあとに後悔することも多いだろうし。

プロデューサーさんを追い詰め、今まで犠牲になったその他大勢と、ここに居る10人とを天秤にかけるも、管理局側にも異世界配信に協力者がおり、一転して逆に選択を迫られるシーンは正直めちゃくちゃ興奮したし、美味しいシーンだった。大変にいい趣味をしていらっしゃるプロデューサーさんが提示した選択は、射落が大切に思う主人公と、自身の兄を含めたそれ以外の人間。ここに来るまでにやり取りで少しずつ近づいて、信頼して、嘘をついていたことを悔いて、ドラマの中ではあるけれど主人公を刺殺して、それでも射落を信じてくれた主人公と、自分の兄を含めたその他大勢の生命。どちらをとるか。天秤にかかる重さが重ければ重いほど選択は難しくなるし、そうなればなるほど私はむちゃくちゃ興奮する。ここでどちらを選んでも私は射落を責める気持ちにはなれなかったし、それは関係ない部外者の視点から見ているからに他ならない。ここまで射落の思いや感情を追ってきたからこそ肩入れしてしまうけれど、他に犠牲になった人にもそれまで追ってきた人生というものがある。残酷かもしれないが、それでもこれは射落ミズキの物語だし、理性で動いてきた射落が最後の最後で自分の主人公への気持ちを認めて、感情で動いてたった一人を選択したのは、イヤな言い方をするならば、恋愛ゲーとしては正しい姿なんだろう。ここでもし射落が主人公を選ばなくても、それはそれで一番大切なものを失ってまで使命を貫いた思いの強さを評価したように思える。それでも射落が主人公を選んだことは、それとはまた違ったとても良い部分の感情も含まれているようで、そしてそれは本来人が持ち得る直情的な意志のようで、それまで自分の気持ちや感情すらも欺いて来た射落の姿が見えたようでも在って、なんだか射落が身近に感じられた。
あと主人公自ら犠牲になろうとする点はとっても興奮した。愛する男のために自己を犠牲にするだなんて美しいじゃないですか。好きな展開が怒涛のようにやってきて興奮しっぱなしだった。

残念だったのはラストシーンで、二人で異世界に残ってなんだかんだ選択できなかった人たちを助けているというオチ。人命に関わることなので心証は良くなるが、究極の選択をした重さは全くなくなるのでそういう意味ではとても萎えた。あとなんだかんだ黒幕も協力してくれている(規制が緩和された?)的な発言があったのも頂けなかったなあ……黒幕がどういう思いで彼らを手助けしたのかはまだわからないが、そんな中途半端ことするぐらいなら最初からこんな迷惑なことしないでくれるかという思いだけが残った。
最後に。CV緒方恵美の破壊力はとんでもなかった……ほんと素晴らしく性癖のツボを押してくる声帯だったし、演技もミズキの正体不明な感じを出してくれてとても良かったです。


いやしかし管理局の人に二人も入られてるとか黒の組織ばりのスカスカっぷりです。敢えて引き入れたんだろうがいいんかそれで。
今の所異世界配信側の意志が全く明かされないしわからないので、なんでこんな事すんだろ的な軽さで見ている。明瀬の両親も射落の兄もどうしてこんな狂ってるとしか言いようがない事に感化されるのかが理解出来なくて、ここが最後まで理解できないとちょっと厳しいものがあるが、それは最後まで見た上で判断したいと思う。
自分も大概拗らせの民なので、ほんとに裏切り者って一人なんか?皆諸事情抱えてるんじゃないか?と思って居て、誰も信じてないし誰も疑ってないみたいなイケメンパラダイスを心から楽しんでしまっている。これは間違った楽しみ方なような気もしなくもないが、明瀬に求めて居たように狂ってほしい人は何人か居るのでその辺りを楽しみにしながらプレイしたいと思います。

今の所一人だけ全く相容れないのは双巳リョウイチさんという御方なのだけど、この方の恐怖発言集が作れるぐらいスクリーンショットを撮っているので、彼のルートでは存分に殴り合いたいと思います。黒幕であろうがなかろうが殴り合いで決着を付けます。
関連記事