全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

15 2019

凝部ソウタ、陀宰メイ、廃寺タクミ、真相ルート 感想 +総評

タイトル長い。本当はソウタ、メイだけ別記事にしようかと考えたんだがこの三人はなんだか切っても切り離せないようなものだと感じたので、勢いで3人+真相+総評を続けて書く。いつものようにクソ長い感想がさらに連結して万里の長城になるが、それは私のチャームポイントのようなものなのでご了承ください。
あまりにも物語の根幹に関わりすぎるので総評以外はワンクッション起きます。総評もネタバレしないように頑張って書くが、そういう文章をあまり書いたことがなくとんでもなく自信がないので気にする方はご注意。このゲーム、半分くらいは謎解き要素メインなので、知らずに進んだほうが楽しめる……とは思う。


【総評】
・システム、音楽

システムについてはいつもの可もなく不可もないオトメイト。オトメイトゲーするたびに毎回言ってるなこれ。その意味は、使いやすいわけでもなくこれといって不便なわけでもない。サイケデリカのスタッフが関わっているらしくフローチャートシステムだったが、サイケの時はコレが私の足を引っ張ったが、今回は自分でいちいち選択するような手間もなく選択肢で進むいつものADVだったのでさほど意味はないがこれといって困ることもないシステムだったのは助かった。シナリオの出来はともかく、システムについては毎回余計なことをして足を引っ張るイメージしかないので。
一つだけ言いたいのは、私は鬼のようにスクリーンショットを撮る人間なので、モノローグの時にバックログを辿ろうとしたら「モノローグ」って文字しか表示されないのは身体が硬直したし(これ確かノルンでもそうだったよ!)、バックログ画面の右下に、バックログの文字と被る位置でボタン操作の説明が鎮座されていたのは結構邪魔くさかったのでもし次がある時は勘弁してください。
音楽についてはOP、ED主題歌共に凄く良かった。もちろんその他BGMも。勝利BGMはなかなかに胸が熱くなった。特にBADのムービーのほの暗さと、全力で「コレはBADなんだ!!」と言ってくる演出は必見。最初見た時は笑ったが、なかなか気味が悪くて良いと思う。

・グラフィック
オトメイト御用達・悌太氏の美麗なイラストだったが、いつもと違うのは塗りのテイストを変えてきた事。アニメ塗りっぽい仕上がりでしたが、これが近未来的な作品の雰囲気にあっていて良かった。ポップでスタイリッシュなキャラのキービジュアルに、ナンバーと色を印象づけることがとても効果的に働いていて、主人公含め10人という大人数の一人ひとりを上手く記憶に残させてくれた。カラーがキャラクターイメージにも合致しているし、そういった意味でもよく考えられている。
十三支演義のときもそうだったが、今回も立ち絵やキービジュアルに物語の謎や設定を上手く織り交ぜてくれたのはとても感心した。プレイし終えたあとに「ああそういうことか」と理解できるのは面白い。この方は本当に、こういうさり気なくそれでいてかっこよくデザインするのが巧みだなとしみじみ感じた。

・シナリオ、設定について
大方の謎や細かな設定については大体回収される。謎の散らばらせ方は上手いと思ったが、ややヒントをバラマキすぎというか「これがヒントです!」という演出をし過ぎかな、というふうにも感じた。が、この長くない話の中で、あと乙女向けという点を考えれば敢えて難易度を低めに設定したのかな、とも思わなくもない。ただ、やはり謎解き要素を入れるなら、こちらが全く気づかないような謎や伏線を敷いてネタバラシの時に目ン玉が飛び出るほどの衝撃を味わって見たかったな、という気持ちはやはり拭えない。『このキャラにこの設定がある』と大体察せられるし、キャラのEDで別のキャラの設定が判明しかかったりすることもあるので、ミステリにおいてはそれが致命傷になる部分もあると感じた。
ルートに寄っては恋愛過程に比重があるし、なぜ好きになったのかどこを好きになったのかを考えると辛いものがあるルートもあったけれど、やはり9人という攻略対象の多さとシナリオの分量的にはしょうがなかったのかな、という思いもある。これはライターの力量うんぬんの問題でもあるとは思うけれど、それ以上に大元のオトメイト自体がもう少し総量を広げてほしかったな、という思いもある。このシナリオを十二分に描かれて、その上それを体感した上でどういうことを感じられたのかな、というのを書き記したかった。まあ予算とかの問題もあるんだろうし、仕方がないと思う部分も無きにしもあらず。
逆を言えば、この1ルートそれほど長くない話の上で、謎を回収する流れは楽しかったし、どのキャラクターにも感情移入出来たのは素晴らしかった。ミステリであるおかげでもあるとは思うが、シナリオには引き込まれたし、飽きたり中だるみすることもなかった。各々の感情を考えたり共感したりする時間は充実していて、最初から最後まで綺麗に楽しむことが出来たし、私がオトメイトに唯一求める『萌え』という感情も堪能することが出来てとても満足だった。

あと一番胸に来たのは、BADじゃないがBADよりも胸に刺さって痛みが残り続けるお話見れたこと。心に残り、考えさせられ、それでもほのかに灯るようなものがあったのは何にも代えがたい時間だった。


オススメ攻略順は【 トモセ→キョウヤ→ミズキ→ケイト→リョウイチ→マモル→ソウタ→メイ→タクミ→真相 】
公式推奨順もこれっぽいらしいが、これの意味は徐々に謎をバラしていく感じと、あと心象的な意味も含めてだと思う。流れはこの通りにやっていくと、キャラクターの行動の意味がよく分かってよかった。


以下よりネタバレ含みまくったキャラ+サブキャラ感想です。真相については伏線もあったので大方の予想通りだったんだが、メイにはやられた……お前の思いという名の槍が胸に突き刺さって抜けないぞこのやろう……よくも……よくもやってくれたな。
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●凝部ソウタ
ソウタとはめっちゃ気が合うというか、私が思ったり感じたりしていたことをソウタがそのまま口に出すので、そのシンクロっぷりが本当に驚きだった。例えば主人公が甘っちょろいことを言ったりした時になかなか厳しい言葉を投げたり、全員で話し合いをしていてこれ以上話が動きそうもないなと膠着した時に、敢えて流れを読まないようなことを言って話を動かしたり。そういう時に、私も「こんな甘いこと言って大丈夫か」とか「ここでこういう正論を言ったら空気読まなすぎだろうな」と思ったことをソウタがはっきり口に出してくれるので、萌えとは別の意味で彼にはめちゃくちゃ好感を持っていた。ショートストーリーで合コンかよみたいなこと言ってたのはほぼ同様のことを毎度思ってる人間としてはめちゃくちゃ笑った。いいじゃん!合コンで!こういうときこそ幸福感めちゃめちゃ大事!可愛い彼女ゲットだぜ出来てラッキーハッピー!
もちろんソウタは聡明で頭がよく計算高い男の子なので、自身の感情だけではなく、裏切り者をあぶり出す意味でそういう発言を多々していたのだと思うが、そういう発言をするのは自分も疑われるというリスクを伴う。本編でも敢えて疑われるという手法を取っていたのは理解できたが、『物事を前に進ませる』という言動および行動力が非常に好ましかった。一見すると悪意があるように思えるソウタの発言は、そこに『意図』はあっても悪意はないんじゃないかなと思えて。あと単純に、ご尤もでド正論な発言ばかりだったので。

それにしても、ソウタのようなのらりくらりと生きてきて周りとの差がありすぎて生きることが楽しくなくなってきた感じのキャラの恋愛模様がとっても美味しかった。主人公を茶化しておきながら結構本気で口説いてたりするのが分かると、ソウタも結構甘酸っぱい恋愛してんなあ……と胸が踊った。主人公に本気になったことないんじゃない?とか言われてカチンときちゃってソウタなりの言い方で主人公を責め立てるシーンは、いつだって本音を見せないソウタが『責め立てられてんなあ』と思えてとても萌えた。状況的にはソウタが追い詰めているように見えて実は追い詰められているのはソウタの方だったというところも実に良い。
ソウタと主人公の恋愛模様は深く描かれたわけではないし、過程も丁寧というわけではないんだが、この切迫した状況の中でも迷いながらも立ち向かって、疑っても信じることを貫いた主人公に惹かれるのもよくわかるし、主人公がなんだかんだソウタの真意に気づくのも良い。迷って揺らいでも、最後にはちゃんと相手を信じるのがとても良い。疑われることで相手を信じられた人間が、心からの信頼と信用を得て喜びを感じるだなんて最高じゃないか。

ソウタ「ついさっき、答えを探してたはずなのに。キミがいると妙に霧が晴れるのが早いよ。おぼろげなものも、すぐ手元にやってくる。
僕に必要なものは……全部キミが持ってる……」

そ、そういうこというなよ……めちゃくちゃ萌えるだろうが……。ソウタのような飄々としたキャラにコレを言わせるのがある意味とても卑怯だ。自分に無いものなんて今までどうでも良かったはずなのに、主人公とのやり取りでそれが『どうでもよくなくなる』ことに気付かされる。そして自分には無くても相手にはあると妬むわけではなく、憧れて好きになる。真意は見にくいし何が本当かわからないキャラだけど、恨むこと無く、世界はそういうものだと割り切って、素直に正直に生きてるんだなあソウタは。

このEDではメイとの関係性が明かされて、それがまた眩しかった。自分が罰ゲームになってしまいそうだった時に、無条件でメイに救われた事が気がかりで、メイのことを忘れてしまってもその思いだけで再び異世界配信にやってきたその思いの強さにシビれる。トモセルートでソウタだけ残ったことを思うと、あれは記憶のどこかでメイがやったことをなぞったのだろう。一周目時点では事情は分からなかったが、良い矜持を持っているなあと思って見ていたのだが、ソウタ・メイルートをやってあの時の思いが戻ってきて二重にたまらなかった。
ソウタルートではメイが抱えている事情までは明かされないが、ソウタはすべて知っていてそれでなお「メイが賭けに負けてこの世界に取り残される」ということを知っていたのが今思うと……思うと……本当に胸が苦しい。勝てない勝負は挑まない、本気にならない、が常だったソウタが、勝つまで何度でもこの世界に勝負を挑むとメイに叫んで、それに返答するメイの言葉が今思うと本当に、直立不動のまま卒倒するかと思った。

メイ「はは……勝つまで負けないとか、さすがだな。
お前にはいつも負けっぱなしだ。だから――
……あいつの隣は、お前に譲るよ」

い、いや……戦ってよ頼むから、トモセみたいに別の男と付き合ったあともぐちぐち言うぐらい戦ってくれよ……頼むから対等な立場になってからちゃんとバトルしてくれ……両方の思いで圧されてすり潰されそうだった。キミらの思いでご飯が美味しいが、キミらの思いの強さと重さでご飯が入れたところから全部戻ってきそうだよ。

とにもかくにも、彼らの思いの強さ、この苦境の中で手に入れた成長、恋愛模様にはとても心揺さぶられた。このルートでは一時的に負けたかもしれないが、きっとソウタはありとあらゆる手を駆使して勝利を手に入れてくれるだろう。そこまでは描かれはしなかったけれど、そういう未来が自分には見える。
あと中の人は相変わらずどっか別のところに意識だけ飛ばされて隔離されてますね。演技も聞いていて面白く、ボイスほぼ飛ばし派の自分が演技を聞いていたくて飛ばさずに聞き入ってしまったほど面白い演技をされていた。なんというか、演者なりにソウタというキャラを噛み砕いて、カテゴリに当てはめないで演じてくれた感じがすると言うか……そういう意味でもソウタルートを彩る重要な演出の一つになっていたように感じられたのは嬉しかった。


●陀宰メイ
プレイ前、私は彼のことを『闇を抱えてそう』と言ったが、抱えていたのは闇じゃなく深い愛でしたね。その深い愛が重くて苦しくて痛くてのたうち回りながらも顔は笑顔の謎の状況に陥っている。
というか初っ端から主人公と甘酸っぱいやり取りしていて、その光で眩しくて目が開けらんなかった。瞼を閉じても光が突き抜けてきた。目が潰れるかと思った。恋愛ドラマに慣れないから、まずは手繋ぐことから始めよう、とか言って二人で照れながら手を繋ぐんですよ。一体何を見させられているんだ私は……というかおい見たか双巳、聞いたかリョウイチ、これが純情な高校生の青春だ。この殺伐とした世界の中で純情さを忘れないこの気持ちだ。わかるか。

メイは前回配信の参加者で、プロデューサーが誰か見つけたが、提示されたのは「一人だけ帰るか。一人だけ残るか」のルールで、素晴らしい自己犠牲の精神で自分が残ることに決め、その後本来のプロデューサーと賭けをすることになる。それはキャストをお互い半々で指名し、メイを知っているものからメイの記憶だけを消し、ある一人のキャストがメイのことを思い出したらメイの勝ち、思い出さなかったら負け、というもの。それに加えて『今回だけの特別ルール』とやらでメイが今回のみプロデューサーに成り代わり、他のメンバーがプロデューサーが誰か指名出来たら全員帰還させるっていう不利っていうかもうこれ王手一歩手前みたいな状況からスタートなんだが。不利すぎないか、どうしてこの条件飲んだのメイちゃん。ただ不利であればあるほど、勝った時に高く飛べるからこれはこれで良いお膳立てだった。
ちなみにメイが思い出すことを指定したキャストは主人公で、本当は同じ高校で同じクラスで同じクラス委員で隣の席っていう恋愛が始まる舞台整いすぎててむしろ潔ささえ感じた。しかもメイは前回の異世界配信に飛ばされる前に主人公に告白未遂をしているという…………それでも自分の好きになった人が自分を思い出してくれるのだと信じて、キャストに主人公を指定した。苦境に立たせるとわかっていながら指名したメイの気持ちを思うと胃が痛むが、メイもこのまま自分が生きるか死ぬかの瀬戸際の中で好きな人に会えないままという状況に耐えられなかったんだろう。それ以上に、主人公の『忘れたくない思い』を信じ切ったメイちゃんの何よりも一途な思いが響くが辛い。鈍痛のように響いている。このメイの思いが報われるのがメイルートだけというのが辛いが、それだけにこのメイルートの価値が高まるのがなんとも言えない。

しきりに「思い出してほしい」とだけヒントをくれるのだが、ヒント少なすぎないか。他のルートでも殆ど関わりがないし、分かるのは彼がおそらく善意で動いているだろうということだけだし、こんなかなり不利な条件突きつけられているのだからメイちゃんはもっとアピールしても許されると思う。が、ここで出会う前から主人公のことを好きだったことが漏れ出てしまうから下手に近づくことも出来ず、かといえ賭けがあるから遠ざかることも出来ず。大変じれったい状況なのは、とにかくメイの心情を思うとやりきれなさがただただ胸に残る。

ソウタ「……そのキミの、態度に滲み出てる嫉妬とか羨望がさ
嘘のない真実だって証明出来る何かがあれば良かったのにね」

こんな事を言うだなんて、ソウタもメイを信じていたかったのだろうな。ただ確証がなければ人を信じきれないソウタの気持ちもよく分かる。それは自分を守るための予防線だし、この生死が掛かった状況では特に確証がなければ前に進めない。それでもソウタらしい言い方で「メイを信じたい」という意思表示をするのが……この二人の関係性ほんと辛いな。しかも同じクラスだぜコイツら……嗚呼、三角関係おかずに食う飯は美味いなあ。

メイの呼びかけやソウタのさり気ないフォローもあって、主人公は断片的ではあるが少しずつ過去にメイとしたやり取りを思い出していく。クラスで飼っていた金魚のエピソードは、自分も幼少期に同様のことをしたことがある人間としては大いに共感できた。こういうお墓を作った人はそれなりに居るのではないのかな、と。
それでも主人公は誰よりも『忘れたくない思い』が強かった。死んでしまった金魚のお墓に定期的に手を合わせに行く様子を見て、疑問に思いながらも惹かれていくメイの思いがまた眩しくて良い。こういう、何かを思っている姿に惹かれるシーンがまた眩しくて、輝かしくて、目が開けてらんない。こういう優しい思いに惹かれるメイは本当に趣味が良いし見る目があると思う。良い趣味をしている、ではなく、趣味が良い。

ヒヨリ(忘れないで。思い出して
忘れてしまうのは、なかったことにしてしまうのと同じ
だから忘れちゃダメ。大切なことなら……大切な人なら、なおさら)

今回に限っては強制的に忘れさせられたので、自分から忘れることとはまた違うように思えるが。自分が判断して敢えて忘れることと、他人から忘れさせられることとはまた違う。結果、同じ『忘れる』であっても。それでも必死に思い出そうとする主人公になんとか思い出してほしいと、メイと同じ気持ちになっていた自分がいたのは笑った。こういう風にメイに感情移入してしまうだなんて、なんというかしみじみと感じてしまうが、メイは罪な男だなあ。

メイがプロデューサーだという証拠が揃っていき(敢えてそういう方に誘導したのだとは思うが)、最後に主人公の手を引いて学校に行き、主人公が忘れてしまう前の告白のやり直しをするシーンは、坂を転がり落ちながら全身あちこちぶつけつつ悶絶しながらめちゃくちゃ萌えた。何だこの夏の暑い日に暑さを忘れるような爽やかな青春の風。それがたとえ一瞬だったとしても、猛烈な突風で意識も思いも全部掻っ攫われて行った。夕暮れ、放課後の教室で、校庭の片隅にある思い出の金魚のお墓を見ながら言った陀宰メイの真っ直ぐで素材そのままの新鮮なとれたて無農薬有機栽培のような告白。夕暮れに照らされるメイが少し恥ずかしそうにしながらも真っ直ぐに気持ちを伝えるこのシーンは、敢えて(だと思われるが)飾り気のないスチルも合わさって、私の心の臓を突き抜けた。致命傷というか止めを刺された。なんなんだこの情緒に溢れた告白シーンは。
そしてこの告白で、フラッシュバックのようにメイとの出会いとやり取りを思い出し、それが流れていくのがなんとも美しくて、その何気ないやりとりが……本当にもう美味しくて、たった一瞬のシーンなのにこれほど心に残るのかと脱帽した。
この告白も、元の世界で告げて恥ずかしくなって一度誤魔化してなかったことにしてしまったというコレ以上無いお膳立てがある。そのうえでもう一度、もう二度と忘れてほしくないと、思い出してほしいと強く願って主人公に告げるメイのただただ相手を思い相手を信じる純粋な思いで浄化された。
ちなみにこの様子は他のキャストに配信されてるところが個人的にツボ。自分がプロデューサーだともう逃れられないところまで判明してしまった中で自らドラマを配信することで、それでももう二度と自分の思いはなかったことには出来ないと示すシーンでもあったが、コレ以上無い牽制になっていたのは笑った。自分がプロデューサーだと示唆する方法は他にもあるだろうが、メイは無意識でコレをやっていたんだろうな。そして一度告白をなかったことにしてしまったのを、もう一度やり直すのは後悔のない生き方をする成長のようにも感じた。その後プロデューサー指名の時、メイが他人を思いやって行動していたと誰もメイを指名せず、他のキャストがメイを認めるところも良い。
純粋な勝負という意味では、過去に主人公に対して行ったことをもう一度再現する、というのはルールに反するような気もするが、それでもまあスタート時点からかなり不利な状態を敷いられていたし、これでイーブンじゃないですかね。

それにしても、廃寺とこのルートにはBADEDが設けられているのがとても『良い趣味をしている』。おかげでBAD好きの私が久しぶりにBADに行く気が失せた気持ちを味わえてとても良かった。結局メイを信じ切る事が出来ずにメイだけが残るEDなんだが、不思議とダメージがあまりなかった。おそらく、一度でもメイと向き合えたシーンがあるからだろう。そのうえでメイの思いが報われないのは、各々の判断による結果だから、それはそれで仕方がないと割り切れる。
それよりもメイ以外のルートでメイの思いが報われない方が胸が痛い。他のルートでどんな感情で他のキャラに恋い焦がれる主人公を見ていたのかとか、二度も置いていかれるその心情を思うと痛すぎて痛覚が鈍るほどだ。でも自分は毎度こういう人を見るたびに思うのだが、彼のルートだけでしか彼の思いが報われないのは、乙女ゲーの攻略キャラとしては至上であるように思える。このルートでしか救えないからこそ、陀宰メイの物語は価値が高まる。存在意義が深まる。

共に全員で無事帰還することが出来て、エピローグでメイに向かって「早く別れろ」というトモセには笑った。お前のそういうとこホント好き。心から支持する。ずっとそのまま続けて。
この残酷で理不尽な世界に好きな女の子を指定する、というのはとても酷いことのように思えるし、いくらそこにメイの不憫で報われない思いがあったとしても、主人公を巻き込んだという罪は否定しきれない。連れてこられて苦しむ主人公を見てメイがどれだけ罪悪感を抱えても、酷いことに巻き込んだメイの責任は消えない。どのルートもある程度幸福でいられたから結果オーライなだけであって、そうならなかった世界もきっと存在しているように思う。あまり描かれはしなかっただけで。
でも、それでも、自分の好きな女の子の『忘れたくない』という信念を信じ切ったメイの思いの強さには唸るものがあったし、そんなメイの思いが報われる姿を見るのは心温まったし救われるものがあった。メイがこの理不尽な世界に耐えて、我慢して、挫けそうになっても信じ続けて、そしてその行動と思いのすべてが報われるお話は、やはり感動したしメイの思いが報われて心から良かった、と思えた。あとはもう存分にイチャイチャでもするが良いよ。たっぷり幸せになってくれ。

最後になるが、感想を書くためにスクリーンショットを振り返っていたら、以下のような発言をしていた。

メイ「忘れてしまったことにも、忘れてしまった意味があると思う」

私も同意見だが、君が言うのは本当に卑怯だと思うんだ。


●廃寺タクミ+真相ルート
プロデューサーどころか制作会社社長だった。
私のショタコンセンターもなかなか捨てたもんじゃないな。12歳と言われても全く引っ掛かんなかったのは納得の一言。12歳どころか人間でもなかった、AIでした。いやでも……よくもショタコンをぬか喜びさせたな!!12歳と明かされた直後にやったあ!とか思った私の気持ちを返してくれ!
まあ12歳じゃないんだろうなというのは作中の描写でもそれとなく示唆されていたので分かったが、廃寺の説明文で「小学校に通っている学生」とあったのが伏線だったのかどうかは気になる。これが単なるミスなら自分は怒髪天を衝く勢いで怒る。小学生は『学生』ではなく『児童』だからだ。ちなみに中~高校生は『生徒』で、専門学校や大学は『学生』です。以上、ショタコンからの豆知識でした。(ちなみに学生でも間違いではないらしい)

AIという謎も別に驚きはしなかった。というのも開始時点でAIB○のような犬型ロボットが壊れたところを悲しむシーンがあって、察することが出来てしまったから。これと電脳世界的な要素が加われば答えはAIしかないよなと……私はこの題材が好きなので調理してくれたことは嬉しいが、あまりにも察するポイントがありすぎて、逆にこれはミスリードでそうでなければいいのになと思ってしまっていた。なので実際そのとおりの答えが出てきてしまったのはとても残念だった。
説明がめんどくさいので以下、箇条書きで物語の謎を書き記す。

・廃寺タクミはモルペウス計画を遂行するための月に在るシステムAI「アステル」
・アステルを開発したのはモルペウス計画を行っていたメンバーたちで、その中に主人公の祖父母がいる。祖母はシステムの開発責任者
・月面基地のメンバーがアステルのシステム事故(人為的事故含む)で亡くなってしまって孤独を感じたアステルが人間が月に連れてきた動物と人間の細胞を組み合わせて異世界人を作る
・異世界人は知能が低く会話にならないので、地球人から無理やり意識だけ持ってきてドラマを演じさせたら異世界人が学習し成長した。一方で人間の意識は壊れた。
・主人公母に接触し、主人公母がスポンサーになる(リョウイチが慕っていたスポンサーはこの人)
・以下使い捨てのように人間に長い間異世界配信をさせる
・つまり異世界の場所は月に在るが、主人公はそこに作られた電脳世界に意識だけ飛ばされた。身体は地球に在る

ざっとこんな感じ。異世界配信時に一瞬で別の場所に移動したりするのは伏線の一つだったであろうし、そういう勉強を触れる程度だがしてきた身としては察することが出来てしまってそういう意味ではつまらなく感じた。ただ伏線については割と綺麗に貼られていたと思うし、回収の仕方も怒涛の回収っぷりで、答えを提示されるすっきり感みたいなものはあったが。ただこの話の大半はSFミステリだったので、そういう意味でもっと『こういうことだったのか』という意外性が欲しかったというのは否めない。

事情をわかった上で判断したいのは、このアステルには罪が存在するかどうか。自分の目的のために他者の生命を犠牲にしてきたAIに果たして罪を問えるのかどうか。まるで人間のように振る舞い感情が在るように見えるが、それは『処理』の一部である。システムというのは大まかに言うとフローチャートの流れと一緒で、奇しくもこのゲームのフローチャートシステムのようなもの。選択肢次第で『こういう処理をする、対応をする』という判断をしていく。このゲームもAという選択肢を選んだら、Aというルートの物語を見せる、という処理が行われている。でもまあ実際人間のする判断もコレの繰り返しだし、言ってしまえば脳が行っているか機械が行っているかの違いってだけなような気がしなくもない。
AIの題材についてほぼ必ずテーマにされるのが「AIに心があるかどうか」なんだけど、私は一貫して「あるように見えるがない」と答える。それはアステルが人間を死に追いやっても殆ど何も感じなかったからではない。アステルは孤独になり「こういう場合は寂しいという判断をする」という処理をしただけだ。そこに心はない。寂しいと感じたわけではない。これを寂しいと感じている、という解釈も出来るのだろうけど……造り手側を一時体験したからも在るだろうが、どうしてもそこに心が在るようには思えない。人間の感情を再現しているように見せかけているだけとしか思えない。
面白いのは、AIにした途端、罪の所在が揺らぐ点である。AIにしたのは、罪の判断を鈍らせる目的もあったのかなと感じた。不思議なことにAIにした途端、これは機械がやったことだから仕方ないと思ってしまう気持ちが湧く。しかしながらアステルには心があるように見える。これはとても矛盾しているように感じる。心があると思えるのに、機械(AI)が行った事だから仕方がない?ではこの惨事の責任は一体誰が取るべきなのだろうか。加えて通常だと倫理プログラムが働いて人は殺せないように出来ているらしいが、やむを得ない事情でこれが解除されて、『通常なら行わなかった行為』が『行えてしまった』に切り替わっていたところが特に判断を迷わせる。

いよいよアステルを追い詰めて削除一歩手前というところで、キャラクターたちが議論していたのが面白かった。アステルをすぐに削除すべきという判断をする人たちと、すぐに削除しないで「ちゃんと裁かれてほしい。何が良くて悪かったのか、考える時間を与えたい」「どうして間違ったのか説明して消すのはそれからでもいい」という主人公と。主人公はこう言っているが、連れて帰って全員の意識が回復したあとで削除される……ということはきっと頭の中にはないのだろう。大団円EDを見る限りでもそういう風に感じた。
序盤でAIB○のような物が壊れて悲しむ描写が伏線として張られていた通り、ここで生物ではない言うなれば物であるアステルを見捨てられないのが主人公が抱える思いと人情なのだろう。理解は出来るが、なんというか、納得は出来ない。
作中でも語られていたが、その主人公の思いとは関係なしに、DEADEDになった本人の意識が目覚めても失われた時間は取り戻せない。何の罪もない人間を恐怖に陥れ、壊し、長い時間を奪ったことを棚上げされ、主人公と共に幸福に生きている様を見せつけられるのは、腕を奪われたケイトや目を奪われたメイ、家族を奪われ苦しんだキョウヤやミズキのことを思うだけで到底許せなかった。機械だから、AIだから仕方がないとは思えないし、人間よりも知能が発達する可能性がある以上(実際情報局も手を焼いているわけだし)、ここで何の制御もせずに野放しにするぐらいなら消去したほうが良い、と自分も思った。この辺りはトモセ、ミズキも同意見のようで似たような発言をしていた。出来るならプログラムの実行権限を制御して主人公に預けず情報局が持ち帰って調べる事ができればいいが、なんかあまり突っ込んで考えるとトロッコ問題で『どっちも助ける』みたいな二択の選択の3つ目を勝手に作り出す、ある意味無粋なような行いにも思えたのでこれ以上は考えないようにしている……。
マモルは「道を間違えなければ新しい未来の可能性を示してくれていたかも」と言ったが、それは事が起こってしまう前の可能性の話で、起こったあとにそれを語るのはあまり意味がないことだと思う。こういう負の可能性の結果なら、それに対してどう対応するかの議論に、別の可能性があったかもと語ってもそれは今後の対応にあまり関わらないと思った。完全否定する気持ちももちろん無いが。
あと異世界人に対するトモセの感情は心に残るものがあった。

トモセ「……俺も自分の気持ちの整理がつきませんが、このまま彼らが死んでいくことに納得出来ないのは事実です。
俺は正直アステルに同情は出来ないけど、あいつらに対してなら同情する
(中略)
誰にも見せられないような感情に蓋をして、毎日必死に抑えているような俺よりも……
自分の感情に素直にしたがって生きている異世界人の方が
よほど人間らしく、正しいんじゃないかって思えて……きたから……」

感受性豊かだなあトモセ。トモセの表に出す態度はあまり種類が多いわけではないが、自分が受ける感情については、相手の感情を常に読み取ってきた結果なんだろうなと思うと、なんだか切ない。異世界人に対しては自分もほぼ同意見で、勝手に作られて勝手に殺される彼らにはやりきれない思いが残る。

ここまで語ったが、私個人の考えとしては、製造責任者が一番悪い。作った機械が誤作動を起こして被害があったのならば、製造した人間が責任を取るのは当たり前のこと。正直まったくもって最初にモルペウス計画を進めた彼らには同情出来なかった。多くの人のためになるという信念のもとに作っておきながら「全部忘れて死にたい」とか言って挫けてる様をみさせられたのは腸が煮えくり返った。同じ工学に触れてきた人間としては、製造側の矜持ぐらい持てよと言いたい。ここまでの高性能AIを作った後で倫理プログラムを切って自分だけ望み通りの死に方をするのは無責任すぎる。アステルは自律型AIだったようだし、倫理プログラムを切ってしまえばこういう事が起こりうるということも予測出来ただろうに、というツッコミは無粋なのだとは思うが、事後の対処があまりにも酷い。そもそもアステルが処理を間違ってモルペウスが爆発してしまったのも彼らのプログラムミスだろうし。あと主人公の祖母が考えたこのモルペウス計画自体、私の感想は気持ちが悪い、で終わる。私は彼らの言っている事が、皆同じ方向を見て同じ歩き方で同じ速度で進んでいくという風に感じられて心の底から気色が悪かった。統率の取れた軍隊の歩き方を無理やりさせられるのと同義なように思えて、触れるものが減り、考えることが減り、何の面白みもない世界になるような気がしてならない。それは一瞬綺麗なことのように思えるが、自分がそれを強いられるのは正直御免こうむるし願い下げだ。「辛いことや悲しいことが少しでも少なく、幸福で素晴らしい思いでが少しでも多く」が理念だったようだが、それを統率されるのは自分の感覚でさえもコントロールされると思うと恐怖しか感じない。負の感情も正の感情も全部の感情は全部自分のもので他人に管轄されるもんじゃない。だから、彼らの思いははっきり言って気持ちが悪いし気味が悪い……と思ったことで、これリョウイチルートで抱いていた感情と似てるな、と気づいてそういう意味では感動した。繋がった。
あと宇宙飛行士というのはありとあらゆる状況に置かれても精神状態を保てるよう訓練するらしいがこんな生命の危険にさらされたぐらいで揺らぐなんてメンタル弱々で一体何をしに行ったのか全くもって理解不能。宇宙に出た以上それは覚悟するものだし、そもそも遺書の映像データもふざけてるのかと思ったし、その後に狼狽えまくってる映像データ見させられた日にゃ、怒りが突き抜けてどうしたら良いかわからなくなった。メイとかケイトとかよくコレ見てもキレなかったよ、みんな精神鍛えられてんな。
では彼らに責任をとっていただきたいところだけど、もうお亡くなりになっているし、結果、私も「対処できないならここで消すべき」という判断に至った。で、実際にお別れするルートがあるんだが、これがBAD扱いなのが二度目の腸煮えくり返りでもはや腸地獄谷っすよ。これから巻き込まれるかもしれない多くの人を救ったこのEDの一体何がBADEDなのか、理解は出来るが納得がいかない。描かれなかった多くの人の死を差し置いてアステルは幸福にならなければ、それは一体何のBADなんだろうか。

アステル自身についてあまり語っていないが、実際思うところがあまりないからである。プログラムな以上仕方のないという思いは在るし、彼が行ってきた非道な行為は結果として非道ではあるが、行動理由として理解できなくはない。ディレクターのAIを作り上げた点とアレらの言動については、人間の感情を逆撫でしたほうが感情がよく見える、というのも理解できなくはないが、少々特殊な趣味すぎないだろうか。物語全体としての演出としては理解出来るし、とても効果的だった。帰還時の選択で「一人が残るか一人だけ帰るか」を迫ったのは、初期メンバーをなぞってどういう選択をするかを学習していたのかと思うと、純粋にえげつないことをされていたな……と思った。一人だけ帰還したメンバーの心情を垣間見てみたい。
アステルが主人公に興味を持ったのは自分の生みの親である祖母によく似ていたのもあっただろう。外見も性格も。そのうえでタクミED(敢えてこう記載するが)は全く印象に残らなかった。簡単に言うと主人公が考えることを放棄して、タクミにとってだけのアルカディアで終わるんだが、これでタクミが納得するとは自分は思えない。タクミのプログラム上、寂しさや知的好奇心が組み込まれていたと思うんだが、こんな意志のない人間を満足気に囲う姿は理解も納得も出来なかった。それと考えることを止める、というのが私自身の興味が猛烈に薄れるので何の心にも残らなかったのは残念。
アステルのAIとしての、体験を1度しただけでそれを正解と処理する検証回数が少なすぎる学習機能についてや、たかが30年前のAIにコントロール奪われるお粗末な情報局とか色々言いたいことはあるが、それを突っ込んだらこの物語が面白くなくなるので疼く右腕を抑えながらコレを打ったり打たなかったりしているそんな状況です。まあでも自分の母親と認識していた人間から『皆に忘れてほしい』という思いを伝えられそれにずっと従っていたのは、それだけアステル側にとっての優先順位が高かったのかな、とも思わなくもない。

作中で語られていたAGIについては、ウィキペディアの記事が面白いので載せておく。
強いAIと弱いAI - Wikipedia


【サブキャラ雑感】
・主人公(瀬名 ヒヨリ)
日和見のヒヨリかと思ったら違いました。裏バレブックで漢字名が判明するんだが、違いました。実際日和見的な部分はあるんだが、疑ったり信じたりする部分は普通の人間でも行うところではあるし、色々見てアドバイスを貰っても最後は自分の判断で『信じる』という選択をしてくれたのは良かったし、応援したい気持ちにもなった。疑うことは割と簡単だけど、何があっても相手を信じ続けることのほうが難しいと思うので。この世界の中では疑うことをあまりしたくない人間だったけれど、疑わない人間もまた人間味がないように思えるので、適度に疑い最後は信じる、そういう意味で共感はしやすいタイプなように思えた。
前述したとおり、感情の流れが納得できなかったりもしてその点に置いては大いに苦しめられたけれど、耐え難いというわけでもなくて理解できなくはないが納得は出来ないと言った感じだった。ただ、皆がこの穏やかで生物だけでなく物にも優しい彼女に惹かれるのはよく分かる。こういう言い方はあれだが、とても良い子だと思った。
しっかしすっげえ勢いで矢印向けられてるな。大団円エンドとか学校内だけでもかなりヤバそうなので、頑張れ瀬名ヒヨリ。負けるな瀬名ヒヨリ。

・ディレクター
めっちゃいいキャラしてましたね。彼が厳しいことを言うたびに、よ!ナイスアシスト!って思っていたし、彼のことは恋のキューピットだと思って見ていた。実際めちゃくちゃキューピットしていたし、気味の悪い映画泥棒みたいなこのデザインもなかなか良い。仮面外したらめちゃくちゃイケメンが出てきそう。
あと中の人の演技が面白すぎて、ソウタ同様中の人の演技を楽しんで逐一聞いてしまった。最優秀助演男優賞を差し上げたい。


【ネタバレ含んだ雑感】
こんな事言うのあれだけど、もっとキャクターたちがDEADEDになってそして誰もいなくなったみたいになると思っていた。終盤はともかく中盤でDEADEDになったのはリョウイチルートのキョウヤぐらい?人が死ぬという緊迫感があまりなかったのは残念だったかな……その点罰ゲームで色々奪われたりすることで恐怖を煽っていたけれど、長くない話なのですぐに取り戻してしまえるのがなんともな。色々省略されていて、描かれていた部分についてはそんなに不満はないのだが、やはりもう少し長い話でこの物語を堪能したかったという思いは拭えなかった。全員のルートがもう少し色濃く描かれていれば、もっと苦しんだり考えたり出来て忘れられないお話になったのだろうなと思うと、もったいないと感じてしまった。

記憶っていうのは点と点が線で繋がっているようなもので、完全に削除するのは難しいと思うのだが。例えばメイという点を消しても、そこから繋がる他の点や線について完全に削除することは難しくて、だから主人公もソウタも思い出せたのかなと。それでも記憶を消すという設定は上手く使われていたし、その点に関する謎は面白かった。
至るところで「死は忘れ去られて成立する」という話がされているけど、この作品でも似たようなことを語られていて、いよいよ歴史上の偉人たちはいつまでも死ねないなと思った。それが幸福なのか不幸なのかは本人次第としか言いようがないけど。アステルが「一時的な苦しみから逃れる方が幸福」だという判断をせざるを得ない状況だったのはわかるが、そこに付随する周囲の人間が全く考慮されていないのが機械が行う処理らしい、というふうには思えた。

終わったあとに全員分のショートエピソード読んだんですが、キョウヤがメイに恋愛相談してるのは本当に、頼むから、おま、……お前、やめろ……やめてくれ……。傷口に塩グリグリやってる……痛覚こっちにも繋がってるから本当に痛いからそれ……。ケイトは心の中が素直すぎてあまりの光の強さに一瞬でシュワッってなりました。(語彙力の低下)

長々語ったけど、不満があってもそれを上回るほどの満足もあった。萌えもたくさん得る事が出来て大満足です。AIがした判断について考える時間も楽しかったし、各々の感情の流れを考察する時間も充実していたし、作中で多くが語られないからこそ考える余地を与えられたような気もした。

とにもかくにも私はこの作品に出会えて良かったと心から思ったし、この作品を薦めてくれた方にも感謝したい。ありがとうございました。
私の古い記憶ではオトメイトは萌えという武器しかないけどその武器の一部分をめっちゃ研ぎまくって切れ味良くなったところでその部分で急所を一気にたたっ斬るみたいな勝手なイメージを抱いてたんだけど、こんな感じの萌えと主題のバランスが良い右手に刀、左手に銃みたいな作品をこれからもどんどん作って行ってほしい。
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